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2006年4月24日 (月)

■勝手な映画評(第14回) 『僕の大事なコレクション』

■ 勝手な映画評(第14回)

『僕の大事なコレクション』  ■

◎総合評価: 55 / 100

Boku3 作品名: 『僕の大事なコレクション』(2005年/米/105分)

監督・脚本: リーブ・シュライバー

原作: ジョナサン・サフラン・フォア。

出演: イライジャ・ウッド、ユージン・ハッツ、他

分野: ロード・ムービー/ヒューマン・ドラマ

公開予定: 2006.4.29(土)

Boku12物語

異常なほどの収集癖のあるユダヤ系アメリカ人青年ジョナサンが、ある写真をキッカケ(写っている女性を探す)に祖父の故郷である、よって自身のルーツでもある「ウクライナ」に旅立つロード・ムービー。

ジョナサンは異常的な収集癖がある。弟の歯矯正器具、兄の使用済みコンドーム、父が行ったコンサートの半券、祖母の入れ歯…、共通点は「家族」にまつわる品ということ。

それぞれをチャック付ビニール袋に各々詰めて、収集室である部屋の壁に、父のものは父の写真の下に、兄のものは兄の写真の下という具合にピンで貼り付けている。

ある日、祖母から、亡き祖父と見知らぬ女性が一緒に写っている古い写真を渡される。それがキッカケで、祖父の命の恩人だという写真の女性アウグスチーネを捜すため、祖父の故郷ウクライナへと向う。

ウクライナに着いたジョナサンは、地元の陽気な青年を通訳(たどたどしい英語)にして、その祖父(車の運転)+アホ犬をガイドに、「3人+1匹」の軽いタッチでユーモラスに展開する珍道中が始まる。

しかし、進むにつれ、この土地に秘められた悲しい過去の物語がだんだんと明らかとなる…。

ジョナサンは、女性を捜すことができるだろうか、そしてこの旅が「3人+1匹」にもたらすものとは?

Boku13寸評

主人公の「ジョナサン」は、原作者ジョナサン・サフラン・フォアと同名のユダヤ系アメリカ人。つまり、全て自伝というわけではないけれど自身の思い入れが濃密に染み込んだ作品と言える。

監督デビューのリーブ・シュライバーは、『スクリーム』シリーズや『クライシス・オブ・アメリカ』に出演していた俳優。

冒頭から、トボケた感じで展開するので、その細かいユーモアに会場は「クスクス笑い」が舞う。ユダヤ系インテリ作家らしい、少しひねくれたユーモアではあるが。

ストーリーの全編を覆う根底には、「ユダヤ人迫害」の暗く悲痛な歴史の重さがあるので、けして明るい内容ではない。

それを、ストレートにではなく、ユーモアチックに仕上げたことが、この作品の魅力であるし、製作者の狙いでもあるだろう。

「ユダヤ人」に対する視点だけではなく、ソ連から独立した(1991年独立宣言)ウクライナという国の現実を粒さに見つめる視点もあり、考えさせられる。

Boku5 向日葵がいっぱい咲く畑の中の一軒家を訪ねる場面は、おそらく作者の意図的映像だろうと思うが、凹凸の少ないこの作品の眼の覚めるような映像で綺麗だった。

ユーモラスであるが、作者の冷徹な一面で表現される部分こそにこの作品を創った意味を、鑑賞者は最後に感じることになる。

人間の残酷さと、その残酷さに相反するそれぞれの家族愛の両面を持つ「人間」「民族」「歴史」を表現することに挑戦した作品である。

Boku15 いい作品ではあったが、完成度は高くないのが残念だ。

それから、『指輪物語』で有名になったイライジャ・ウッドが、意図したわけではないと思うが、この作品の肝要な場面で「指輪」との関わりが出て、私の頭の中ではリンクしてしまった。(笑)

●お薦め度:(★5つが満点、☆は半星)

*イライジャ・ウッドのファン → ★★★★

*人間の複雑さを味わいたい人 → ★★★☆

*ウクライナの景色や人を鑑賞したい → ★★★☆

*デート  → ★★

*暇つぶし  → ★☆

● 「劇場」 VS  DVD」 (どちらで観る?のお薦めは…)

WIN:「劇場」

向日葵畑は、是非大画面で!

公式HP:  http://wwws.warnerbros.co.jp/everythingisilluminated/

鑑賞日 2006.4.24(月) 特別試写会(よみうりホール)

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コメント

こんにちは。自分は100点にします。他の映画と比べて感動しますよ。完成度も高いです。映像も美しい。映画を観たら「僕の大事なコレクション」ってタイトルが輝いて見えてきます。DVDでもいいかと思ってたのですが、ぜひ映画館へ足を運んでほしい映画です。可愛い、面白いだけではないので、大人の映画です。

投稿: konan | 2006年4月26日 (水) 09時17分

大人の映画です。要注意。

投稿: konan | 2006年4月26日 (水) 09時18分

konan さん。

コメント、ありがとうございます。
100点満点とは、お気に入りの作品なんですね。

“ユダヤ人迫害”を扱ったものは名作も多く、この作品も「秀作」とは思います。
ただ、現代の「イスラエル」(もちろん、アメリカも含めて)と「パレスチナ」、いわゆるパレスチナ問題を視野に入れると複雑な気持ちになります。
虐げられた経験を持つ民族が、“今”、“約束の地”で何をしているのかを思うと、人間の「業」を思わずにいられません…。

なお、この作品の原題『Everything Is Illuminated』(すべてが明かされる(照らされる))というのも、なかなか意味深いですね。

これからも、よろしくお願いいたします。


投稿: トムとジャッキー | 2006年4月26日 (水) 22時10分

トムとジャッキーさん、レスありがとうございます。私は基本的に戦争映画が苦手なので、戦争がファッション化する映画は賛成できないほうなので、こういう映画は根本から好きです。笑いが通じたら戦争もないだろうし。戦争は他国の相手も同じように笑うのだと、わからない者同士がやりはじめるものでしょう。言葉が通じなくても笑えるならいいかと思います。

投稿: konan | 2006年5月 6日 (土) 20時12分

Konanさん

コメントありがとうございます。
Konanさんのおっしゃる主旨は分かります。

ただ、戦争は多くの場合、為政者が始めて、戦場に行くのは一般人というパターンがおおよそです。
「笑い」は、人々の心の緩和にはなりますが、戦争阻止には残念ながら繋がらないと思います。

> 他国の人も同じように笑うのだと分からない者同士が始めるものでしょう

現代の戦争はそうではありません…、残念ながら。
基本的に為政者は有学識者で「笑いもユーモアもエスプリも」備えていたりします。ヒトラーであっても個人を見れば悪魔ではなかったし、人の痛みも分かる絵の好きな青年でした。

「セルビアとアルバニア」の内戦、いわゆるコソボ自治州の事項を考えてみてください。隣同士で仲良く暮らしていた人々(笑いも共通に楽しんでいた人々です)が、突然、一方的な迫害が起こります。
コソボ自治州やパレスチナの問題などは、人間・民族・宗教・歴史…等々多くのしがらみが如何に理不尽なことでも正当化される危険をいつも孕んでいることが、明白に分かると思います。

というのが、私の見解です。
(もちろん、この作品は秀作だとは思っていますよ!)

投稿: トムとジャッキー | 2006年5月 6日 (土) 21時12分

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